絆、信頼とは――
みなさんは、どんなときに誰かを「信頼している」と感じることがありますか?
長い時間を一緒に過ごしたからなのか。
何度も助けてもらったからなのか。
それとも、自分の身を預けても大丈夫だと思えた、その瞬間なのか。
「信頼」とは、相手を信じ、頼りにすること。つまり、ただ仲がいいというだけではなく、「この人なら任せられる」と思える気持ちまで含んでいます。
また、信頼と似ている表現として「絆」という言葉があります。
「絆」には、人と人とをつなぎとめるもの、離れがたい結びつきという意味があります。もともとは、馬などの動物をつないでおく綱を指す言葉でもあったといいます。
考えてみれば、絆も信頼も、ある日突然できあがるものではありません。
一緒に過ごした時間。
危険なときに取った行動。
言葉にしなくても伝わった意思。
そして、相手が自分のために何をしたのか。
そんな小さな積み重ねの先に、いつの間にか生まれているものなのかもしれません。
『VIVANT』に登場する野崎守とドラムを見ていると、「絆」や「信頼」という言葉が思い浮かんでしまいます。
一人は、多くの人間を見ながら真実を追う野崎。
もう一人は、多くを言葉で語らず、それでも行動で野崎を支え続けるドラム。
上司と部下なのか。仲間なのか。友人なのか。
けれど、パート1からパート2まで二人を見ていると、それだけでは言い表せない何かが、確かに積み重なっているように見えてしまいます。
野崎は、なぜドラムを信頼するのか。
そしてドラムは、なぜそこまで野崎を信じ、彼についていくのか。
その答えを決めつけるのではなく、二人が歩いてきた道をもう一度たどりながら、その間に生まれた「絆」を見つめてみたいと思います。
野崎守とは
砂漠が広がるバルカ共和国。
爆発事件に巻き込まれ、現地警察から追われることになった乃木憂助の前に現れたのが、阿部寛さん演じる野崎守です。
野崎は、警視庁公安部に所属する公安警察官。パート1ではバルカで乃木や柚木薫と出会い、日本への脱出を助けながら、やがて物語の奥に潜む「別班」や「テント」へと迫っていきました。
野崎を見ていると、簡単には人を信用しない人物だと感じます。
相手が何を言ったのかだけではなく、何をしたのか。
その行動の裏には何があるのか。
何気ない会話や小さな違和感にも目を向けながら、自分の目で確かめようとする。
人を疑うことも、公安という仕事をする野崎にとっては必要なことなのでしょう。
しかし、野崎はただ人を疑い続ける冷たい人物ではありません。
危険な状況では自ら前に出て、守ると決めた相手のためには大胆な行動を取る。そして一度相手を認めれば、その人物の力を信じて任せる姿も描かれています。
パート2では、その野崎自身が物語の中心へと大きく踏み込んでいきます。
かつてバルカで乃木を助けた野崎が、今度は乃木たちから追われる立場にもなり、さらに彼自身の過去や潜入捜査も明らかになっていきました。
そんな野崎だからこそ、気になることがあります。
簡単には人を信じないように見える野崎が、ドラムには自然に背中を預けている。
指示を出すときにも、必要以上の説明をしているようには見えません。
それでもドラムは動く。
そして野崎もまた、ドラムなら動いてくれると分かっているように見える。
なぜ、そこまで信頼できるのでしょうか。
その理由を考えるためには、もう一人の人物――ドラムについて見ていく必要があります。
ドラムとは
野崎のそばには、大きな体と柔らかな表情を持つ、一人の男がいます。
その名は、ドラム。
TBS公式では「心優しきエージェント」と紹介され、富栄ドラムさんが演じています。
作中では自分の声で多くを語らず、スマートフォンから流れる林原めぐみさんの音声を使って意思を伝えるという、ひときわ印象的な人物です。
しかし、ドラムの魅力はその個性的な姿だけではありません。
バルカの街を駆け、車を操り、危険な場面では迷わず動く。
野崎から指示を受ければ、長い説明を交わさなくてもすぐに行動へ移る。
言葉で多くを語らないからこそ、表情やしぐさ、そして何より「何をするのか」が、ドラムという人物を伝えているように感じます。
パート1を振り返れば、最初は野崎を支える現地の協力者という印象だった人も多いかもしれません。
けれど、危機を何度もくぐり抜ける姿を見ているうちに、その見え方は少しずつ変わっていきます。
野崎が進めば、ドラムも動く。
野崎が何かを任せれば、ドラムはそれに応える。
そこには「言われたから従う」というだけでは説明しにくい、二人だけの呼吸のようなものがあります。
実際、TBS公式でもドラムを「相棒ドラム」と表現したことがあります。
そして、ドラムを見ていて特に印象に残るのは、信頼を言葉で説明しないことです。
「私は野崎さんを信じてるよ」と長く語るわけではない。
それでも、危険な場所へ向かう。
必要なら動く。
そして、野崎のそばにいる。
その一つ一つの行動が、言葉よりも強く二人の関係を伝えているように見えてきます。
では実際に、野崎とドラムはこれまでどのように互いを支えてきたのでしょうか。
ここからは、パート1からパート2までの二人を振り返りながら、その「絆」が見える場面を追っていきます。
野崎とドラムの名シーン
野崎とドラムの関係を考えるなら、やはり実際に二人が行動する場面を見ていくのが一番分かりやすいでしょう。
二人は「信頼している」と何度も言葉にするわけではありません。
それでも、振り返ってみると、パート1の頃からすでにその片鱗は見えていました。
始まりから見えていた、二人の呼吸
第1話。
爆発事件の犯人と疑われた乃木、野崎、薫は、バルカ警察によって連行されます。
ところが、護送車の運転席にいたのは警察官ではありませんでした。
ドラムです。
ドラムが助手席の警察官を倒し、後部座席では手錠をかけられた野崎が別の警察官を制圧する。
長い作戦説明も、派手な掛け声もありません。
二人はそれぞれがやるべきことを理解しているかのように動き、そのまま乃木たちを連れて逃走します。
そして、首都クーダンへ向かう途中。
バルカ警察の検問を前に、野崎たちは羊やヤギの群れに紛れて進みます。
野崎が自ら顔を見せ、チンギスの注意を引きつける。
その瞬間、野崎の合図を受けたドラムが銅鑼を鳴らします。
驚いた羊やヤギが一斉に動きだし、検問所は混乱。その隙を突いて一行は突破していきました。
この場面を改めて見ると、二人の連携にはほとんど迷いがありません。
野崎が合図を出し、ドラムが応える。
お互いが次に何をするのか分かっているような、そんな呼吸があります。
実際、パート1放送当時、野崎を演じる阿部寛さんはドラムについて「もう全面的に信頼しています」と語り、野崎自身もドラムを非常に信頼している感覚があると話していました。
つまり、少なくともパート1の時点で、二人はすでに単なる「公安警察官と現地エージェント」では片づけにくい関係として描かれていたのだと思います。
野崎を探し、国を越えたドラム
そしてパート2。
二人の関係を考えるうえで、大きく印象が変わる場面が訪れます。
シンシーへの潜入を続ける野崎。
その野崎を探して、ドラムは自らゴルバド共和国までやって来ていました。
仕事として命令されたからなのか。
公安の任務だったからなのか。
作中ですべてが細かく説明されているわけではありません。
だからこそ、ここでは決めつけることはできません。
ただ一つ確かなのは、ドラムが野崎を探して、そこまで来たということです。
パート1では、野崎が動けばドラムが応える姿が多く描かれていました。
しかしパート2では、野崎がいない。
だから今度は、ドラム自身が野崎を探して動いた。
この違いは、二人の関係を見るうえで、とても大きいように感じます。
銃口を向けられたドラムと、沈黙する野崎
そして第17話。
捕らえられた野崎の前に連れてこられたのは、やせ細ったドラムでした。
リュウ・ミンシュエンは、野崎が本当に日本を裏切ったのか、それともシンシーへの潜入捜査をしているのかを見極めようとします。
ドラムに拳銃が向けられても、野崎は沈黙を守る。
しかし、その銃口がドラムの口の中へ入り、引き金に指がかかる。
そこまで追い詰められた場面で、野崎は真実を明かしていきます。
ここで印象に残るのは、大げさな言葉ではありません。
野崎がそれまで守ろうとしていたものと、目の前にいるドラムの命。
その二つを突きつけられたときの、野崎の表情です。
そしてドラムもまた、野崎を探して国を越え、結果として自ら危険の中へ入っていました。
また、このあと二人は牢獄に入れられます。
そこで野崎は、与えられた自分の食糧だけでは十分に動けないドラムに対して、自分の食糧まで分け与えます。
その結果、野崎自身は水も食糧も満足に口にできず、次第に弱っていきます。
それでも、目の前のドラムを優先する。
銃を向けられたときのような派手な緊張感とは違います。
薄暗い牢獄の中で、自分に残されたわずかな食糧を相手へ渡す――。
この小さな行動にこそ、野崎がドラムをどれほど大切に思っているのかが表れているように感じます。
このシーンは、本当に涙が止まりません。
パート1で見せていたのは、息の合った「連携」だったのかもしれません。
けれどパート2まで見ていくと、それだけでは説明しにくくなってきます。
野崎が合図を出し、ドラムが応える。
そんな関係から始まった二人は、いつしか、相手が危険なら自分が危険な場所へ向かい、自分の分まで相手へ差し出す関係にまでなっていたように見えます。
それを友情と呼ぶのか。
相棒と呼ぶのか。
それとも、もっと違う言葉があるのか。
やはり答えは簡単には出せません。
ただ、バルカで銅鑼を鳴らしながら一緒に逃げていた二人と、ゴルバドで互いの命を前にした二人。
その間に積み重なった時間こそが、野崎とドラムの「絆」なのではないでしょうか。
まとめ
野崎とドラムの関係を振り返ってみると、やはり一つの言葉だけでは言い表せないように感じます。
パート1では、野崎が合図を出し、ドラムが応える。
危険な場面でも迷いなく動く、息の合った二人でした。
しかしパート2では、野崎を探して国を越えるドラム、ドラムの命を前に真実を明かす野崎、そして牢獄で自分の食糧まで分け与える姿が描かれました。
私は、そんな二人を見ていると、信頼や絆とは、言葉ではなく行動の積み重ねなのかもしれないと感じます。
友情なのか。
相棒なのか。
それとも、もっと違う何かなのか。
無理に答えを出す必要はないのかもしれません。
野崎にとってドラムとは何なのか。
そして、ドラムにとって野崎とは何なのか。
私は二人の間に、確かな「絆」があるように感じました。
みなさんは、野崎とドラムの関係をどのように感じたでしょうか。
参考資料・出典
TBSテレビ 日曜劇場『VIVANT』公式サイト
TBSテレビ 日曜劇場『VIVANT』登場人物・各話あらすじ
TBS NEWS DIG「アフターVIVANT」第17話関連記事
TBSテレビ『VIVANT』公式お知らせ
MANTANWEB 阿部寛さんインタビュー
漢字ペディア「絆」
コトバンク「信頼」


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